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人間中心の認知症情報学の発展に向けて

認知症の人は,認知機能障害のために些細なことや環境の変化で混乱し,感情的になりやすく,その結果,様々な精神症状を生じてしまう事があります.認知症の根本的な予防法や治療法は確立されていないため,認知症の人や家族の生活を支えるには,介護や医療だけではなく,行政機関や地域社会,さらにはIT(情報技術)や情報学などのすべての社会資源を総動員することが必要と考えています.
このような観点から,私たちは「認知症は病気ではなく個性である」と考え,認知症の人の意図感情理解と,認知症の人とのコミュニケーション技術に焦点を当て,「認知症情報学」として下記の研究を進めています.

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  1. 認知症の人の個性の抽出と表現
  2. 認知症に関する知識・スキルの形式知化と伝承
  3. 自立重視のコミュニケーション環境デザイン
  4. コモンセンス(常識)と情動(感情)感情思考モデルに基づく感情行動理解
  5. 高齢社会の住空間ユーザ環境適応システム
  6. 多職種連携を促進する地域包括ケアシステムの構築
  7. パーソナル情報の保護と利活用の仕組


1.認知症の人の個性の抽出と表現

検討中…


2.認知症に関する知識・スキルの形式知化と伝承

  • 認知症アシストフォーラム(http://ninchisho-assist.jp)
  •  認知症の人の診断,治療,ケアには,医師,看護師,看護福祉士,理学療法士,地域ボランティア,家族など様々な職種や立場の人が関わっています.それぞれの職種や立場に応じて,問題意識と背景知識をもっており,多くの優れた取り組みがなされ,知識やノウハウが蓄積されてきましたが,専門分野の垣根は高いようです.当研究室が2013年秋から運営しているWEBサイト「認知症アシストフォーラム」では,内外の多彩な専門家が,知識・技術・ノウハウを「顔が見える映像コンテンツ」として情報提供しています.その結果,認知症に関する研究者や専門家の人的ネットワークが広がり,一般視聴者の「学びの場」として成長しています.

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3.自立重視のコミュニケーション環境デザイン

  • 認知症ケア技法「ユマニチュード」の評価
  • ユマニチュードは「ケアをする人とは何か」,「人とは何か」という基本命題を根底にし,知覚・感覚・言語によるコミュニケーション技法を軸としたケアメソッドです.しかし,ユマニチュードは経験的に確立されたため,その有効性評価が不十分です.
    ユマニチュードの評価にはカンファレンスによるケア提供者と患者のインタラクション分析が有効と考え,インタラクション分析のためのカンファレンスツールの構築を目指しています.ツールを用いて,ユマニチュードインストラクターやユマニチュード学習者,事例映像内でケアを提供する看護師本人,などを交えた事例分析を行い,ユマニチュードの評価につながるエビデンス構築をおこなっています.
    ジネスト・マレコッティ研究所日本支部:http://igmj.org/

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4.コモンセンス(常識)と情動(感情)感情思考モデルに基づく感情行動理解

  • 意図理解のための思考表現プラットフォームの構築
  • 情動理解のためのマルチモーダル行動記述フレームワーク
  • 認知症の人には,もの忘れや判断力の低下といった認知機能障がいと,認知症本人の性格や周りの環境などからの要因によって生じる行動・心理症状(BPSD,Behavioral and Psychological Symptoms of dementia)の二つの症状が生じてくると考えられています.二つの症状の内,特に BPSD は,興奮・暴力や不潔行為などの激しい症状が生じるため,介護・医療現 場では対応に苦慮しています.BPSD は激しい情動を伴うことから,感情の側面から分析することによって,ケアの高度化につながると考えられています.しかし,認知症は未解明な部分が多 く,多角的にエビデンスを蓄積する必要があります.
    そこで,当研究室では認知症の理解に向け,認知症の事例を収集し,情動理解のための分析フレームワークを構築することを目指しています.

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5.高齢社会の住空間ユーザ環境適応システム

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6.多職種連携を促進する地域包括ケアシステムの構築

認知症検査法の評価結果を統合し,認知症の人をより深く理解するための仕組みの構築.そして,医療・介護現場における多職種連携のための情報共有の実現に向けた研究をおこなっています.

  • 認知症アセスメントツールの開発
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  • 内服薬の影響を考慮した認知症コーパスの開発
  • 認知症は高齢者の割合が圧倒的に高く,そして,高齢者はその身体疾患のため,たくさんの処方薬を内服している場合があります.こうした内服薬が,認知症の人の認知機能障害や特にそ の精神症状に影響を与えている場合が多くあります.残念ながら現在の認知症の人を支える現場では,内服薬の影響が適切に評価されずに,見逃されていることが多くあります.
    このような内服薬の影響を考慮した認知症コーパスの構築に向けて研究をおこなっています.


7.パーソナル情報の保護と利活用の仕組

竹林教授が情報処理学会「個人情報の利活用促進に関する検討WG」に所属し,パーソナル情報の保護と利活用のための仕組みについて検討を進めています.(http://www.ipsj.or.jp/event/sj/sj2014/itforum_kojinjyohoWG_program.html)